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ゴシック文の練習1

 呪わしき日の光が夜の帳に沈み、血の時間が訪れた。一片残らず欠け落ちた新月の虚空に広がるは底無しの闇。ぬばたま暗き地の表には、白く凍てつく霧の海。おぼろに更けゆく二月の夜は硬く静かに凍結し、血の正餐を待っていた。
 ヴィクトリア様式の建造物が影を落とす倫敦市街。今宵の贄を求めて妖霧漂う街路を独り歩くは白皙の麗人。闇のごとくに溶け込む外套を羽織りつ、目深にかぶられたる帽子より一房の銀髪を夜気に弄らせている。右手にあるは刃渡り四インチの短剣。いまだ血を吸わぬ刃の光芒が漆黒の闇中に照り映えて、銀色の雫がこぼれ落ちる。
 女は吸血の鬼であった。人の生き血を啜り、肉を喰らう魔鬼。有史以来連綿と続く系譜の末子として、女は正しくその血を伝えていた。そればかりか、先代より継ぐ殺人の鬼としてもまた完璧なる後継者であった。その血統正しき名の一つはカーミラ。
 この夜のカーミラは女を欲していた。既に人の血肉を断たれてより五日。飢えたる猛獣にも勝る血の渇望は、生白き女の肉を以てより他に癒す術があろうはずもなく。血臭探りて闇を渡る吸血の幽鬼は、さながら血肉の亡者であった。低く踏み鳴らされる靴音は鋸歯波の旋律を石畳に刻みつ跳ね返り、滑るように動くカーミラの後を追って昏き瘴気が渦を巻いた。





 ふだんの三倍ぐらい労力がかかるので、とりあえずここまで。
 この調子でエログロやったら需要あるかな。

| Lesson | 23:15 | comments(3) | trackbacks(0) |
銃を撃つ

 小説を書くうえで、「どこまで描写すべきか」というのは重要な問題だ。たとえば、「銃で男を殺す」場面があったとする。一人称において最も簡潔に書くならば、こうだ。


 銃を撃った。男は死んだ。


 まったく無駄がない。感情描写もなければ、状況説明もない。銃や男に関する描写もない。ある意味、究極のハードボイルド文である。もしこの主人公が殺人をなんとも思っていない冷徹な人間ならば、この文章は正解だ。よけいな説明を加えることは、主人公の性格を殺しかねない。
 しかし、こうした状況の主人公が必ずしも冷徹な人間であるとは限らない。なにかの事情があって止むを得ず殺すこともあろうし、積年の恨みを晴らすために何十年も追い続けた果ての一撃かもしれない。そういう状況であれば、この文章はあまりに簡潔すぎる。もっと文章を膨らませるのが普通だ。ここで、「どこまで描写すべきか」という問題が発生する。
 ハードボイルドの枠内で進めるならば、徹底的に「起こったこと」だけを書くのが良い手だ。とくにアクションシーンでは短いセンテンスをテンポよく並べるのがセオリーである。


 銃を抜いた。ジェリコ941。9ミリ弾が込められている。銃口を男に向けた。照門と照星がまっすぐに男の胸を捕らえた。五メートル。外しようのない距離だ。男は命乞いの言葉を吐いた。ひどい南部なまりだった。無視して引き金を引いた。四発、たてつづけに撃った。すべて命中した。男は短くうめくと、その場に崩れた。そのまま二度と動かなかった。



 こんな感じだろうか。なんらかのアクションがあったときには過去形を使い、現状の説明をするときは現在形を使う。うまく織り交ぜてリズムを作り出すのがコツである。すべての文章を過去形にするとスピード感は出るが、文章が詰まりすぎて読みにくくなることがある。また、主人公の行動についていちいち「私は……」などと入れない。入れなくても主人公の行動だとわかるからだ。
 では次に、ハードボイルドでない文体。人を殺したことはおろか、銃に触れるのも初めての女性が男を殺す場合。


 銃を手に取った。どうやって撃つのかわからなかった。見よう見まねで安全装置を外した。たぶん、これで撃てるはずだ。両手でかまえて、男に向けた。五メートルぐらいの距離だ。当たるかどうか──。男が南部なまりの言葉で「やめろ、撃つな」と叫んだ。しかし、もう遅かった。今日こそ殺すと決めたのだ。力を込めて引き金を引くと、思ったより軽い音が鳴って銃身が跳ね上がった。当たったかどうか、わからなかった。続けて三回撃った。全部で四発。そのうちの何発かが当たったらしい。男はうめき声をあげながら倒れた。そうして、ぴくりとも動かなくなった。──ついに殺してしまった。そう思った。



 いくらか感情描写が入ってくる形。これでもかなり無駄のない描写であろう。おそらく人が初めて誰かを殺す場合、もっと多くの感情描写が必要となる。あるいは逆に冷めた視点から書いておき、のちのち振り返って反芻したり苦悩したりする方法もある。どれが最善なのか、それは人それぞれである。(だったらこんなもん書くなと)
 いや、じつは単に銃で人を撃つシーンを書きたかっただけですので意味はありません。あー、そうだ。例の吸血鬼がテーマの小説、これで片付けようかな。1シーンだけを延々と書き連ねる形で。ウソです。いやマジでやるか。どっちだ。
| Lesson | 19:20 | comments(2) | trackbacks(0) |
ハードボイルド変換2


 生来、向こう見ずな性格だ。それで失敗することが多い。
 小学生のとき、校舎の二階から飛び降りて一週間立てなかった経験がある。何の理由でそんな馬鹿をやったかと訊く者がいるだろう。特に大した理由はない。俺は新築校舎の窓から外を眺めていた。そこへ、同級生がこう言ったのだ。「いくらお前でも、そこから飛び降りれやしないだろう。チキン野郎」と。それだけだ。結局、用務員の世話になって自宅へ帰った。父は目をむいて怒鳴った。二階から飛び降りて立てなくなる馬鹿がどこにいる。そう言った。次はうまく飛び降りてみせるさ、と俺は答えた。
 こんなこともあった。親類から譲り受けたナイフを陽の光に照らして友人どもに見せびらかしていたとき、その中の一人が「見かけ倒しで切れ味は悪そうだな」と言った。何でも切ってやると俺は嘯いた。すると、お前の指を切ってみせろという注文を受けた。指など朝飯前だ。言い放って、右手の親指を斜めに切りつけた。ナイフが小さかったのと骨が丈夫だったのが幸いして、今でも指は残っているが。傷跡が消えることはないだろう。



 漱石の文章はわりと好きです。ちょっと稚拙な単語が混じるところが受け付けないぐらいで、他は文句なし。物語自体も面白いし。とくに『坊ちゃん』は主人公が実にハードボイルドです。この冒頭二段落で主人公のダイハードぶりに引き込まれること必定。問題は、この作品の中で最も面白いのが冒頭部分だという事実ですが。
 こうして文章をブツ切りのハードボイルド文体にすると、改めて文豪たちの言語センスに驚かされます。やってみて気付いたんですが、原文には一度も一人称代名詞が出てこないのですよ。それでも支障なく読めるというのは、やはり凄い。目標点の一つだな。




親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。小使に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。
 親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳して、友達に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。そんなら君の指を切ってみろと注文したから、何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。幸ナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、今だに親指は手に付いている。しかし創痕は死ぬまで消えぬ。
| Lesson | 00:20 | comments(0) | trackbacks(0) |
ハードボイルド変換1


 メロスは激怒した。あの邪知暴虐の王を殺す。そう決意した。
 メロスは政治を知らなかった。村の牧場で働く男なのだ。笛を吹き、羊と遊んで暮らす生活だった。しかし、邪悪なものに対しては敏感だった。人一倍に。
 メロスは早朝に村を出た。40キロの道を歩き、ここシラクスの町に着いた。彼には両親も妻もいなかった。十六歳になる妹と二人きりだった。妹には婚約相手がいた。実直だけがとりえの牧夫だ。結婚式も間近だった。花嫁衣裳や披露宴で振る舞う料理を用意するために、メロスはシラクスを訪れたのだ。
 彼は、まず用事を済ませた。そのあとで、町の大通りを歩いた。



 他人の文章を勝手に書き換えると犯罪なので、著作権の切れた作品をひっぱってきた。ありがとう、青空文庫。それにしても、太宰の文章なんて十五年ぶりぐらいに読んだなぁ。小学生のころから死ぬほど嫌いな文体だったが、いま読んでもやっぱり嫌いだ。文体だけでなく物語自体も好かん。特にこの作品は国語の授業で初めて読んだとき吐き気を催したほどであった。設定からなにから無茶苦茶だし、だいたい最後のアレはなんだよ。あれで笑えというのか。ちっとも面白くないぞ、オサムちゃん。……って、そういえば当時の感想文にも同じようなこと書いて教師に睨まれた覚えが。精神構造かわってねぇなぁ、オレ……。


 一応、原文も貼っておくか。


 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。

| Lesson | 00:51 | comments(1) | trackbacks(0) |
ハードボイルドじゃない練習
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ということでハードボイルドの対極の文章をレッスン。つまり真逆のことをやればいいわけで……



  •  心理描写を徹底して書く。行動には理由がなければならない。他人の行動にも理由を推測する。主人公は理性よりも感情によって行動する。従って主人公は女性が望ましい。(男の場合ただの馬鹿に見える)


  •  風景描写に主観を含む。視界に入らないところについても想像する。読者の五感に触れる(官能的な)描写をする。個人的に触覚をおざなりにしがちなので注意する。「硬い」「柔らかい」「熱い」「冷たい」など、どのように「そうである」のか描写する。


  •  修飾語を多用する。接続詞、擬声語など率先して取り入れる。稚拙、下品な言葉は用いない。印象の強い言葉は多用しない。ここというキメの場面でアクセントとして使う。類語辞典が役に立つが、主人公の知的水準に従うこと。


  •  過去の回想を多く含む。未来の予想もする。どちらも暗いもののほうが良い。夢の中での話、架空の寓話など、リアルでない話を積み上げて世界を作る。ただし、作られる世界はリアルでなければならない。




 えーと、こんなところか。で、具体的にどうするか。安直にエロ小説でも書くか。というか、そんなにエロ小説を書きたいのか、俺は。いや別に書きたくないんだけど。そもそもネタがないしな。そういや先日、百合小説好きな人からリクエストがあったな。それで行くか。『マリみて』みたいなヤツ。読んでないからよく知らんけど。あの世界でシリアスドラマをやったら受けそうだ。書けるかどうかが問題だが。
| Lesson | 01:26 | comments(7) | trackbacks(0) |
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