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ハードボイルド変換2


 生来、向こう見ずな性格だ。それで失敗することが多い。
 小学生のとき、校舎の二階から飛び降りて一週間立てなかった経験がある。何の理由でそんな馬鹿をやったかと訊く者がいるだろう。特に大した理由はない。俺は新築校舎の窓から外を眺めていた。そこへ、同級生がこう言ったのだ。「いくらお前でも、そこから飛び降りれやしないだろう。チキン野郎」と。それだけだ。結局、用務員の世話になって自宅へ帰った。父は目をむいて怒鳴った。二階から飛び降りて立てなくなる馬鹿がどこにいる。そう言った。次はうまく飛び降りてみせるさ、と俺は答えた。
 こんなこともあった。親類から譲り受けたナイフを陽の光に照らして友人どもに見せびらかしていたとき、その中の一人が「見かけ倒しで切れ味は悪そうだな」と言った。何でも切ってやると俺は嘯いた。すると、お前の指を切ってみせろという注文を受けた。指など朝飯前だ。言い放って、右手の親指を斜めに切りつけた。ナイフが小さかったのと骨が丈夫だったのが幸いして、今でも指は残っているが。傷跡が消えることはないだろう。



 漱石の文章はわりと好きです。ちょっと稚拙な単語が混じるところが受け付けないぐらいで、他は文句なし。物語自体も面白いし。とくに『坊ちゃん』は主人公が実にハードボイルドです。この冒頭二段落で主人公のダイハードぶりに引き込まれること必定。問題は、この作品の中で最も面白いのが冒頭部分だという事実ですが。
 こうして文章をブツ切りのハードボイルド文体にすると、改めて文豪たちの言語センスに驚かされます。やってみて気付いたんですが、原文には一度も一人称代名詞が出てこないのですよ。それでも支障なく読めるというのは、やはり凄い。目標点の一つだな。




親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。小使に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。
 親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳して、友達に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。そんなら君の指を切ってみろと注文したから、何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。幸ナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、今だに親指は手に付いている。しかし創痕は死ぬまで消えぬ。
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