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『クロームドシティ』の世界1-1

 右手の痛みで目が覚めた。小指の先に疼くような痛みが跳ねている。三日ほど前から、こうだった。地下街を歩いていたとき誰かのスーツケースの角にぶつけてしまって以来、神経整合がうまく働いていないらしい。耐えがたいほどの痛みではないが、睡眠を妨げられるのはごめんだった。明日にでもファクトリーに行くべきだろう。
 ベッドを出て、アンプルを二本飲んだ。一つは生体ナノマシンを維持するための処方薬、もう一つは一日に必要なカロリーとあらゆる栄養素の詰まったケミカルブレイクファースト。この二つがあれば、一日生きていられる。
 地下室のベッドルームには日が差さない。それでも、夜だということはわかる。この街では、昼と夜とで空気が違う。街の喧騒の届かない地下にさえも、冷たい夜気は忍び入ってくる。微かに漂う火薬の匂いと、クロームの輝き。
 目覚ましに、熱いシャワーを浴びた。零時に中央公園で予定が入っている。一秒でも遅れればペナルティだ。クライアントはたいてい時間にうるさい。すっかり目が覚めたところで、街へ出る準備をした。
 黒のシャツに黒のチノパン。スニーカーも黒。ついでに髪も黒だ。夜は黒以外身に着けない。この街の深夜を白い服で歩くなど、狙撃してくださいと言っているようなものだ。
 サングラス型のミラーシェードをかけて、脳につないだ。自動的に輝度が調整されて、見慣れたスクリーンが視界を覆った。シャツの上に防弾コートを引っ掛けて、ベッドサイドからシグを二丁。弾倉を確かめてコートの内側に吊るした。銃もコートも必要ない予定だが、念には念だ。
 地下三十メートルの自室から、エレベーターで地上に出た。外気に触れた瞬間、身が引き締まった。ひどく寒い。十一月とは思えない空気が街の底に淀んでいた。空高く張り巡らされたドーム型の天蓋には、雲ひとつない暗黒を支配するかのように巨大な月が真円を描いていた。決闘にはふさわしい夜だった。
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