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『クロームドシティ』の世界1-2

 定刻の五分前に着くと、すでに公園には役者がそろっていた。このデュエルのプロモーター、クライアント、ジャッジ、それに対戦相手、周囲を取り巻くギャラリー。公園の中央部には一メートルほど底上げされたステージが設営されている。ステージの四隅にはポールが立てられて、さながらボクシングかプロレスのリングだ。ロープを張れば完璧だろう。実際、そういうリングで行われるデュエルもある。だが、今夜のそれは違う。殴ったり撃ったりするような、野蛮な戦いではない。もっとスマートでエレガントな、紳士の戦いだ。血の一滴も流れない、クリーンな戦い。──通称、セントラルフロスト。
 ステージに近付くと、俺の姿を認めたギャラリーから喚声が沸き上がった。この街で俺を知らない者は滅多にいない。セントラルフロストにおいて無敗の五十勝をあげた人間は、俺以外に存在しないのだ。少なくとも、この街では。
 クライアントが出てきて、「遅かったな」と言った。いつものことだ。適当にあしらって、ステージの下に立った。対戦相手はすでにステージの上だった。顎鬚を生やした、三十後半ぐらいの男だ。疲れたようにポールに背を預けて、うつむいている。新品みたいにまっさらな白のシャツに、ダークブルーのスーツ。おまけにネクタイまでつけている。珍しいタイプだった。
 少し用心することにした。メモリから相手のデータを読み出すのと同時に、ネットからも検索した。得られた情報は少なかった。名前はマサキ。想定レベル70前後。小規模なハッキンググループのリーダー。公的ペナルティ値ゼロ。
 どこにでも転がっているような男だった。おおかた、今までの対戦相手と同じように一攫千金が狙いだろう。だが、そう簡単にはいかない。このデュエルで五十回勝ち続けるということがどういうことか、認識が甘いのだ。身をもって知る必要がある。残念ながら、知ったときには死んでいるわけだが。
 ステージの上から、ジャッジが手招きした。ゴングの時間だ。一メートルの高さにあるステージへ、一蹴りで跳び上がった。同じように呼ばれて、マサキが顔を上げた。億劫そうに腰を上げると、あくびをしながらジャッジの横に立った。緊張している様子はなかった。そこにつけこむのは諦めたほうが良さそうだ。
 正面に向かい合った俺たちの間で、ジャッジが一本のケーブルを出した。長さ五メートルほどの、やたらと太いネイビーカラーのプローブケーブル。両端にコネクタがある。ジャッジがその片方を俺に握らせ、もう一方をマサキに握らせた。コネクタの下にはノイズフィルターのような装置が付けられて、ケーブルの通電状態を示すLEDがずらりと同軸上に並んでいる。八極ケーブルのそれぞれを監視するLEDが二つずつ、計十六。今は全てのLEDが消灯して、なにも通電していないことを示している。
 コネクタを耳の後ろのジャックに差し込んだ。ケーブルを右手に握ると、LED表示がちょうど目の前に来る。このLEDがすべて青になれば俺の勝利だ。赤なら敗北。一度も見たことはないが。
 マサキがコネクタを差した。ジャッジが芝居がかったポーズで腰を落とし、腕時計を見つめた。俺は百万分の一秒単位でカウントダウンを開始した。このデュエルでは、開始直後のコンマ一秒が勝負だ。その間に過半数のチャンネルを確保することができれば、勝利はほぼ確実。実際、セントラルフロストの勝負はほとんどが三秒以内に終わる。一流のアスリート並みの号砲反応が要求されるのだ。もっとも、俺たちはそれをコンピュータに頼ることができるわけだが。
| Text | 18:48 | comments(1) | trackbacks(0) |
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コメント
Good site and good blog.Thanks
| OnlineSlots | 2006/03/17 10:58 PM |
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